コリアン食堂・総責任者の高氏は提案した。
「コリアン食堂の運営は、南地域とコラボする」
尾張地域メンバー全員、その考えに賛成した。
なぜ南地域とコラボなのか?
この質問に対して、高氏は以下のように説明してくれた。
大きくは2つ。ひとつは、出店するメイカーズピアが南区に隣接する港区に位置したこと。そうすることによって、効率良い作業ができると思った。南地域の会員たちはアツイ。そのメンバーたちとコラボすることは、尾張にとってもプラスに働くとも感じた。
もうひとつは、李舜麒会長の存在。
李氏の兄とはチェーサン時代からの親友ということもあり、幼少期から可愛がっている弟みたいな存在だった。ただ「可愛い」から一緒にコラボしたいわけではない。それなりの理由があった。
南地域青商会と言えば、全国的にも模範的な地域であり、県内では「最優秀地域KYC賞」に最も近いとも言われているほどだ。
その伝統を引き継いできた金正壽前会長からバトンを受け取り、李氏は奮闘を誓う。李氏が着目する点は、会内の長けている部分ではなく、課題点。それはまさしく、財政事業であった。
南地域の財政のメインは、会員たちから集める会費だ。その会費は決して軽いものではない。色々と事情があっても、何とか会費を捻出してくれる会員もいれば、お小遣いから会費を払ってくれる会員もいる。李氏は、会費に依存する体制を早く抜け出して、地域や学校に貢献できる仕組みを構築したい、そう考えていた。
「青商会活動の場は、無料で色々な経験が出来る場所」と考えていた李氏。「何かヒントを得たい」と向かった先が、尾張地域だった。財政事業に真剣に取り組み、目標額を達成するため、一丸となる姿は、李氏の目標となる。
南地域は、財政事業の一環として「フリーマーケット」出店の経験がある。しかし、より大きな財政を確保するため、一宮七夕まつりに学ぶことが多いと思った。そのような経緯で、李氏は、一宮七夕まつりの仕込みに、お手伝いとして一日体験をした。
「4日間の開催中に、多くのお客さんを呼び込み、暑い中、鉄板の前で調理、接客、次の日の仕込まで全て終わらせ、また営業をします。僕は一日だけ体験させてもらいましたがキツイですね。半端な気持ちじゃ、絶対に出来ないと思いました。
また、尾張の財政事業の良い面は、お客が在日だけでなく、むしろ地域の日本の方々に協力して頂いてるところです。こういう面を見習い、南地域にも導入すべきと思いました」
高氏は、李氏の気持ちを見逃さなかった。しっかりと見ていた。だからこそ、兄貴として教えれることを伝えたかった。
「一緒にやろう」
正式にオファーを受けた李氏は、当時の心境を次のように振り返った。
「自分の中では何の迷いもなかったです。率直に『やりたい!』と。以前から、会員たちもお祭りの出店等やってみたいという意見もありましたので、こんな良い話はないと思いました。今年の目標が『楽しく』『本気で』『挑戦する』。ピッタリだと思いました」
オープンを目指して、尾張と南のコラボが始まった。準備期間は、とにかく楽しかったと振り返る。メニュー開発は素人集団なので不安もあったが、みんなと意見を出し合った。ワイワイガヤガヤした雰囲気の中、一体感も生まれる。同じ志を持つ会員との活動、地域が違っても楽しいなと感じた瞬間。
初めての経験だったが、楽しく本気で挑戦した。
そして2020年12月26日。ついに「コリアン食堂」がオープンした。
(最終話へ続く)
最終話は6月21日更新予定です。