コリアン食堂物語〜第1話「迷いはなくただ実直に」〜

『新型コロナウイルスの感染防止と、来場・市民の皆さんの健康と安全を確保することを最優先に考え、第 65回一宮七夕まつりは開催を中止とする』

衝撃が走った。

本来ならば、2020 年 7 月 16 日〜19 日までの 4日間、お祭りで賑わうはずだった。長年続いてきた伝統のお祭り。コロナの影響で中止せざるを得なくなり、市民は落胆しただろう。

尾張地域青商会もその渦中にいた。

彼らは一宮市を拠点に活動する。会員のほとんどが一宮市またはその近辺に在住する。愛着がある。そんな彼らにとっても、お祭り中止の知らせは、かなり響いた。

毎年、お祭り期間に屋台を出店し、特大ネギマを売る。4 日間でおよそ100万円の売上、40〜50万の利益を生む、一大財政イベントと呼んでも過言ではない。

尾張地域青商会。「財政事業のお手本」として、全国に名を馳せている。

尾張の財政事業の主軸は、「キムチ販売」と「一宮七夕まつり」にある。キムチを調達、販売、自主的に配達まで行い、毎月、約10万円ほどを確保する。

と言っても、祭りでの出店は、短期間で毎月のキムチ販売の利益より、何倍もの利益を生むため、相当な痛手となる。

また、「地域活性化」という観点からも、マイナスだ。仕込みから販売に至るまで、支部、女盟、そして会員たちの家族も含めて、「オール尾張」が絡むからだ。

さあ、どうする。

尾張地域青商会・高博史生活文化部長(以下:高氏)は動じなかった。

「失ったのであれば、また新しく創造すれば良い。財政活動というのは、特定の期間だけ行うものではない。常にやっていくものだと思う」

尾張青商会に一宮七夕まつりの話を持ち込んだのは、高氏である。「一宮七夕まつり」で得るはずだった財政の穴埋めをする。高氏は、その責任を全うすることを決意する。

現実は、そんな簡単なことではない、財政を確保することは。

尾張地域青商会はミーティングを繰り返し、知恵を絞りに絞った。が、一筋の光はまだ見えてこない。そんな刹那、一本の電話が鳴る。昔から親しく交流している日本の友人からだった。

「レゴランド前のメイカーズピア内で、出店の話がある」

高氏はピンと来た。「これだ!」

定例会の場で提案し、承諾を得て、実行が決まった。一宮七夕まつりでの出店に代わるもの、それがまさしく、「コリアン食堂」であった。新しいビジネスチャンスを、尾張自らの手でつくりあげた。

出店準備も大変だろう、限定開催期間も大変だろう。しかし、そんな心配よりも期待のほうが大きかった。

「ウリハッキョのために、子供たちのために、地域のために」

第2話はコチラからどうぞ。

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