“最高のバックアップ体制”で愛知バスケ界を盛り上げる

2019年9月、愛知朝中女子バスケ部が在日朝鮮学生中央体育大会で、創部史上初の優勝を果たす等、近年、愛知県ウリハッキョ(朝鮮学校)バスケ部の活躍が著しい。選手たちの絶え間ない努力が実を結んだ結果だ。

そしてその陰には、オンザコートの選手たちを全面的にバックアップする、OBたちの力があった。権勇錫県会長を筆頭に、青商会の最前線で活躍する会員たちも名を連ねる。

日々、多忙を極めるOBたちは、なぜそこまでアツくなれるのか?どのような活動を続けるのか?

その真相について、1999学年度愛知朝高籠球部主将であり、愛知籠球協会現理事長の金正吉氏が語ってくれた。

朝高籠球部OB会と愛知籠球協会の“強力タッグ”

ウリハッキョバスケ部強化のために、まずは朝高籠球部OB会と愛知籠球協会の差別化を図り、各団体の役割分担をより明確にすることから始めました。

実質、両団体に属するOBは被る傾向がありますが、「OB会」という名前を使うことによって、全てのOBの名簿を作成し、各年代ごとに連絡を取れる体制をつくることが出来ました。より多くのOBたちが、関わりやすくなったと思います。

結果、多くの協力を得られることとなり、学生達により良い環境をつくってあげることが出来ました。

具体的には金銭面の支援が主となります。練習や試合で用いる用具、例えば、バスケットボール、ビブス、ユニフォーム、練習着、練習器具等の購入に充てています。また、長期連休のあいだに行われる、強化合宿や遠征の援助金としても使用しています。

夏に行われるOB会では、学生たちの試合相手になり、アドバイスを送ったり、学校で焼肉を準備して、公式戦に向けて激励の言葉を送ったりしています。

一方で、愛知籠球協会の活動は、金銭面以上に技術的な支援が目立ちます。特に、初級部、中級部、高級部のバスケ部監督やコーチたちとの連携を強化しました。

定期的に協会理事長と会長、指導者たちとの合同会議を開き、各カテゴリーごとに報告をしてもらい、共に解決策を模索しています。そして、学生指導をより焦点化する目的で、外部コーチを派遣しています。監督やコーチと連携を深め、練習や練習試合、公式戦で指導に励んでおります。

2年前から協会とOB会が一体となり、新たな取り組みとして、チャリティーゴルフコンペを開催するようになりました。

2019年は約50人、2020年は約60人の人達が参加してくださり、多くのチャリティー金を集めることが出来ました。それは、すべて協会とOB会の判断で学生達の為に使わせて頂いています。

支援活動は“使命”であり“当たり前”

愛知籠球協会の理事長という大役を任せられ、少なからずプレッシャーはありますし、辛いこともあります。しかし、自分が学生時代だった頃を振り返ると、そこにはいつも愛知籠球協会や朝高OB会からの温かい支援がありました。

また、学生時代にバスケ部で過ごした時間があったおかげで、今の自分があると思いますし、今もその時の仲間や先輩達に支えられながら生きていると思っています。

バスケを通して、大事な思い出をつくれました。自分たちが受けたことを考えると、自分がOBの立場になって、支援活動を行うことは、使命であり当たり前のことだと思っています。

子供たちにも今だけではなく、今後も大切な思い出や、一生の仲間を作って欲しいと思っています。

しかし大前提として、それを実現させるためには、まずバスケ部自体の存続をしなければなりません。

少子化問題も相まって、ウリハッキョに通う子供達が減少している中で、バスケ部の存続を守る為には、部員を増やさなければなりません。部員を増やすためには、我々が環境を整えてあげなければなりません。とすると、支援することは必然だと考えています。

李延男会長の背中を追いかけて

私が活動を続けられる要因として、愛知籠球協会会長の李延男先輩の存在も大きいです。長年、愛知バスケ界に尽力されてきた大先輩ですから。高校時代の実績も輝しく、中央体育大会では幾度も優勝を経験している、本当にすごい選手です。

私は、愛知籠球団に所属していた時から、プレイ面でもプライベートの面でもお世話になりました。会長の“バスケ愛”には頭が下がります。

仕事や家族があるのに、愛知籠球団でも、他のバスケチームでもバスケを続け、常に高みを目指しています。ウリハッキョ学生への指導も怠りません。休日には練習や練習試合に参加し、大事な公式戦は、仕事を調整してでも向かいます。

また、最近では、中央青商会会長として、全国を訪れる機会も増え、とても多忙であったにも関わらず、一切の妥協も見せない、本当に尊敬できる人です。そんな会長の姿を見てきました。

今後もOBとして活躍してほしい

振り返れば、今このようにプライドを持って活動ができることは、朝鮮大学校を卒業した後、権勇錫先輩から誘われて、愛知籠球団の練習に行ったことが始まりです。当時は「騙された」と思いましたが、今はバスケを続けたことに何の後悔もありません。

今後も、学生たちがバスケを通して逞しく育ってほしいと思います。また、どんな大会や、目標の公式戦でも頑張って結果を残してほしいし、結果につながるような環境づくりをさらに強化していきたいと思います。

私自身、朝中時代、朝高時代とキャプテンを任されましたが、むなしくも大きな結果を残すことは出来ませんでした。その時の後悔はまだ残っています。

ですので、学生たちが、後悔することなく、無事学生バスケを終えられるように、私も全力で使命を果たしていこうと思います。

最後に学生たちへ伝えたいことですが、バスケ人生に終わりはありません。プレイを終えることはあっても、支援活動はずっと続きます。朝高を卒業後は、OB として、共に子供たちの未来のために頑張りましょう。

取材後記

取材を終えて、感じることがたくさんありました。愛知籠球協会・金正吉理事長はじめ、愛知バスケ界に関わるOB皆様の熱意に脱帽せざるを得ません。金正吉理事長からの言葉からも、力強さを感じました。

愛知朝高バスケ部と言えば、とにかく強いイメージしかありません。私が中1の頃の朝高バスケ部主将が、愛知籠球協会・李延男会長で、中央体育大会を圧倒的な点差で優勝したことを覚えています。

私はバスケ部OBではありませんが、ド素人ながらも5年ほど、朝高バスケ部のコーチを務めました。その時に、愛知籠球協会やOB会の温かい支援を肌で感じましたが、改めて今回の取材を通して、それを思い知りました。

今まで、愛知籠球団やOBたちの試合を数多く観てきましたが、愛知バスケの特徴は「上手さ」だと思います。華麗なパス捌きや、ドリブル、シュートフォーム、そして相手DFを綺麗に崩して得点を奪う攻撃スタイル。

それが愛知の DNAだとすれば、強いメンタルに加え、そのDNAを引き継ぎ、「愛知のバスケスタイル」で、全国の舞台で活躍する姿を見たいと思います。

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