朝高サッカー部と「共に」愛知同胞の夢を叶える!いざ選手権へ! 〜選手権出場のために、OB ができること〜

毎年冬に行われる「全国高等学校サッカー選手権大会」。全国高校サッカー選手たちの憧れの聖地である。愛知朝高サッカー部も、ここを目指し、日々奮闘する。

しかし、その夢は選手だけのものではない。選手権に出場資格すらなかった OB たちや、あと一歩のところで涙を流したOBたちの「夢」でもある。それゆえ OB たちの、ウリハッキョ(朝鮮学校)サッカー部への支援は厚い。

その中に、「選手権」に対して特別な感情を抱く男がいる。朴推典だ。母校サッカー部をこよなく愛し、十数年間、 選手たちと共に成長を目指してきた、その想いについて訊いてみた。

2000学年度愛知朝高サッカー部主将として、「悲願の選手権初出場」を目指し、サッカーボールを追い続けた推典。
全国の朝高サッカー部が集う中央体育大会では、優勝を果たし、全国朝高の頂点に立つと同時に、愛知朝高に久しぶりの優勝カップを届けた。
選手権予選は、周囲の期待通り、愛知朝高史上初のベスト4まで勝ち進むも、準決勝で、惜しくも中京大中京に0-1で屈する。
勝者は決勝戦で5-0 という快勝で全国出場を決め、「悔やまれる結果」に追い打ちをかけた。だが、これが推典の運命を大きく動かす。

編集部(以下、編):朝高サッカー部はじめ、ウリハッキョサッカー部への支援活動を長年続けてこられたと思います。そのきっかけについて教えて下さい。

朴推典(以下、推) :選手権予選の準決勝で負けたことが、やっぱり大きいですね。当時、県内では、どの高校よりもバックアップ体制、関心、戦術、体力は整っていたと思います。だけど、「下手でした」。

1本のパス、ドリブル、シュートの精度が低かったから負けた、それがすべてです。技術があれば、朝高は選手権に出られる、他は全部揃っていますので。

その為には、ジュニア年代のレベルアップが必要、自分がそこに関わり、李太庸監督のもとに良い選手を送ろう、そう思ったのがきっかけでした。

編:これまで沢山の子供たちの指導に携わってきたと思いますが、選手の育成において、中心視したことは何ですか?

推:常に子供たちに伝えていたのは、「技術は気持ちが支える、押し上げてくれる」ということでした。どれだけ技術があっても、それを発揮できるメンタルがなければ無いのと同じ。

勝ちたい、上手くなりたいという、目の前のことに対するものだけではなく、オモニが休日にもお弁当をつくってくれること、送迎してくれること、毎回応援に来てくれること、ソンセンニン(先生)達が休みもなく一緒にサッカーをしてくれること等、いろんな人達の支えがあること、その人達の想いを忘れないことを強調しました。

そんな選手が上手くなるし、強くなる、そのプレーは、観ている人たちの心を掴むこともできます。高校の時に学んだことをそのまま伝えていました。

編:仕事を抱えながら、ウリハッキョで指導を続けることが出来たモチベーションは何でしたか?

推:ただ好きだったからです。サッカーが、子供たちが。そして、サッカーを指導させてくれる環境があったからです。

会社、学校、先生、学父母、子供たちが受け入れてくれたから以外、無いですね。特にウリハッキョとソンセンニン達には感謝しても、しきれないです。特に実績があるわけでもない自分を、温かく受け入れてくださったので。

そして僕は、陰ながらウリハッキョの支援を続ける同胞たちから、たくさんのことを学びました。自分自身が、表舞台で活動できることを考えれば、途中で投げ捨てることは絶対にできませんでした。

上記のとおり、推典は、ゴールデンエイジと呼ばれ、技術的に最も伸びると言われる小学校世代を対象に、名古屋朝鮮初級学校サッカー部で、コーチとして指導に長年携わってきた。
関わった選手たちの中には、現在、朝高サッカー部監督を務める、李晃輔先生がいる。推典は、サッカーの基礎からみっちりと教え、原石を磨き上げた。
李晃輔先生は「サッカーの楽しさだけではなく、サッカーに対する情熱を学んだ」と振り返る。彼もまた、愛知朝中3年時に、主将として史上2度目となる全国優勝を成し遂げるのであった。

編:推典氏は、愛知朝高サッカー部 OB 会でも長年活動をされていると聞いています。どのような支援活動をされていますか?

推:主としては、愛知朝高サッカー部への財政的なバックアップです。今は中級部や初級部へのバックアップも行っています。

収入源はOBの皆様から頂く年会費、イベント広告費、ゴルフコンペでのチャリティー金、OBの方々からの寄付となります。その頂いたお金で、選手たちの遠征費の補助や、グラウンド使用料、必要備品の購入などに充てています。

特に高校サッカーは、金銭的に負担が多いので、少しでも足しになればと思います。

編:毎年夏に行われる OB 会イベントも盛大ですね。

推:そうですね。OBも沢山集まり、学生たちと一緒にボールを蹴ったり、焼肉を食べたりと、とても盛り上がりますね。

またタイミング的にも、選手権予選開幕の直前なので、選手たちを叱咤激励するベストな時期だと思います。

OB会では、OBたちを募って、選手権に応援に向かいます。

編:実際は、とても大変なことだと思いますが。

推:僕たちが高校の時にしていただいたことを、今は自分達がしているということです。

高校時代の恩師・李太庸監督が、常々おっしゃっていた言葉が「恩を仇で返すな。背恩忘徳な人間にはなるな」でした。何事にも感謝を忘れず、「受けたご恩は返しなさい、そしてそれを次に繋ぎなさい」と。

とても心に響きました。『恩送り』ですね。これは今の自分たちの活動の源泉であり、大事にしていることです。

編:最後に、「朝高サッカー部はこうでなければいけない!」と思う事を教えて下さい。

推:強くあってほしい、勝ってほしいというのが、OBたちが望んでいることです。

ですが、自分が上手くなるために努力し、チームの勝利の為に走って、応援してくれる人達の声援を力に、あと一歩足を踏み出せる、どんな状況でも決して諦めることなく戦う、そんな選手が集まったチームになってほしいと思います。

その姿は、観た人達の心を掴みます、そんなプレーに一喜一憂し、負けた時は一緒に悔しがり、涙を流します。言うなれば【共に戦えるチーム】であってほしいですね。

そんなチームを通して、自分ももっと頑張ろうという活力を、周りに与えてくれます。そんなチームと全国大会で共に戦うことが、僕たちOBの目標であり、すべての活動の源泉です。

(フルスロットル愛知第4号特集長編版)

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